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Vジャンプ緊急増刊 FINALFANTASY6完全攻略
「坂口博信VS植松伸夫バトルインタビュー」
──やっとFF6制作作業が終わられたということで、これからはどうされますか。
植松さん:僕は例によって、アレンジ版CDの制作に入っちゃいます。
坂口さん:ミラノに行くんじゃない。
植松さん:CD4枚出すんですよ、これから。あの、集英社さんの企画ものが最優先ですけど(笑)。そのシングル一枚作るでしょう。次に、毎回出してるピアノソロ、譜面付きで出して。それはね、ウィーンで録るんですよ。で、それが終わってから。ミラノへ行ってオーケストラバージョンで6をやって。今度は帰ってきてから1〜6までのベストというか、歌モノで一枚作ります。だから4月半ばまであるんですよ仕事、実は。
──坂口さんの方は。
坂口さん:僕は…いろいろと休めないんですよ(笑)。
──口をとんがらかして言わないでくださいよ(笑)。
坂口さん:バトル対談ですから(笑)。
──今回のFF6、スタッフのみなさん、みんな頑張ったと思うんですけど、今までより、頑張った点というのはありますか。
坂口さん:ゲームの質、それから製作期間のきつさですね。それと、逆に5があそこまでのクオリティでいっちゃったんで、プレッシャーもありました。だから、すべて大変でしたよ。
植松さん:やっぱり。越えたいじゃないですか、5を。他人の評価じゃなくて自分の中で。だから、けっこうきついですよね。評価を無視して、自分が5の中でどこまでいったか、というのは自分が知ってるわけですよね。だからあれを越えるには、ガムシャラにできるとこまで駆け抜けるしかないなーと思って。でも、終わって気持ちよかったですよ。もう、現段階ではこれ以上のことはできないと思ったし、僕は。おそらく35人のスタッフがみんなそう思ってくれたんじゃないかなーという感じはしますけどね。精神的にも肉体的にもプレッシャーあっただろうし。
──坂口さんにお聞きしますが、システムとかシナリオとか、いろいろ考えることがあったと思うんですけども。その中でもとくに、今までを越えてやる、と思ったところはどのあたりですか。
坂口さん:まあ、一番大きかったのは、世界観をイメージチェンジしようっていうのがあったことですか。クリスタルが支えてる世界じゃなく、別の世界ですよね。それをみんなで意見を出しあって作りあげようっていうのがありまして、その作業ってのは、逆に今までやったことなかったですからね。いつもはある程度ベーシックなものがあって、そこからスタートしてましたから、そこらへん作り上げるのはつらかったですよ。システムを作ったりとか、ストーリー的なこととか。それから実際の画面でのイベント化というか映像化するときも、毎作、毎作、倍々くらいの割合でつらくなっていきます。
──今回とくにキャラクターの演技が、すごく気合いが入っているような気がしたんですけど。
植松さん:細かいでしょ今回。
坂口さん:キャラが大きくなったせいもありますけどね。
──あと、前に比べて、ぐっとくるセリフっていうのがすごく増えている気がします。
植松さん:僕もそう思った。名セリフが多いでしょ。
坂口さん:最初にみんなから募集したんですよ、名セリフを。その語録を作って、11人のキャラが決まった段階で、それぞれがどんなセリフをしゃべったらぐっとくるかっていうのを、それぞれがワーって書き出していったの。、そしてそのセリフをストーリーのどこにあてはめるかっていう作業をして。それが今までにないやり方でね。
植松さん:初めてだったね、あれは。
──名セリフからキャラが立っていったと。
坂口さん:基本的な性格付けをして、彼らだったらどんなセリフをしゃべるだろうっていうのを、全員が考えて煮詰めていく中で、いいものだけを残しながらやっていって。そうするとスタッフ全員のイメージが一緒になりますから。あいつはこんなやつだっていう。もうその段階でみんなの頭の中では、ロックならロックっていうのが、実在の人物まで練りあげられますよね。それがチーム全体の共感にはつながるとは思うんですよ。
──その名セリフを残していく作業をやることによって、全員の統一感っていうのができてくると。
坂口さん:そう。それでロックのテーマ曲ができてきて、今度はロックのキャラクターを天野さんからあがってきて、いろんなイメージが重なって、1つのものができるわけです。
植松さん:あれは初めてのやり方だったんですけど、正解だったと思いますよ。初め、10人以上もキャラクターがいて、どうしようかなって思ったんですけど。
坂口さん:最初はもっと多かったですよ、20人以上かな(笑)。みんなこういうキャラ出したいって言うもんですから、それから厳選していったり、キャラを合体させたりとか、そういう作業はしたんで、密度は高くなったかなと思います。
──それじゃ、お2人が気に入っているキャラクターは。
植松さん:俺、リルム。
──どういうところが好きですか。
植松さん:かわいいじゃないですか。天真爛漫で…。
坂口さん:いや、違います。植松の中ではチョイスの中で、まず女キャラしかいないんですよ(笑)。リルムかティナかセリスかで、リルムを取ったと(笑)。
植松さん:でもね、キャラのテーマ曲を作るじゃないですか。デモテープで坂口とかに聞かせるときに、女キャラの曲って聞かせたくない部分ってのはあるんですよね。自分が女に対してどう思っているかっていうのが、なんか、ハダカにして見られているような気がして。
──坂口さんの一番好きなキャラクターっていうのは。エドガーが一番近いと言われていますが(笑)。
坂口さん:みんなそう言いますけど、あれは違うんです(笑)。イベント演出って僕と北瀬がメインでやってたんですけど、大体エドガーのセリフってのは北瀬が作ってるんですよ。彼がたぶん、僕に対するイメージで書いたんですよ(笑)。
植松さん:そうかなー(笑)。
──それぞれの作業をしていくうえで、とくに苦労をしたことっていうのはありますか。
坂口さん:作ってる最中も大変だったんですけど、逆に詰め込みすぎて、いろんな支障がありました。いろんな種類のプログラムが入ってるんで、デバッグがものすごい大変だったんです。バグは今までよりかなりの量が出て、やればどこかが出るって状態が1ヶ月くらい続いて。今回は、1回打ち上げしてから10日間くらい徹夜してましたから(笑)。とにかくバグ出ないでくれって状態(笑)。
──24メガでもかなり足りないみたいでしたけど。
坂口さん:かなり切ったみたいですね。絵ですごいきれいな背景いろいろ入ってたんですけど、無くなったのがかなりありましたね。
──次回作に持ち越せるだけのアイディアはまだ残っていると。
坂口さん:考えていませんから、次回作のことは。
植松さん:それはねえ、ちょっと、もうそろそろ勉強というか吸収したいっていうのがありますね。今回、僕はあんまり苦労しなかったんです、実は。僕いつも途中でプレッシャーに押しつぶされそうになって、何もできなくなって、プイッてどこかへ行っちゃうんですよ。旅行に突然、2、3日。今回それもなかったし、順調でしたね。曲もね、オペラ座なんか、どんどんできちゃうんですよね。ダーッと書いて録音して、最初に坂口に聞かしたときのデモテープってのが45分くらいあったんですよ(笑)。聞かせたら「ダメだこんなの、ここは15分でいいんだ」って(笑)。
──一番見てもらいたい、聴いてもらいたいポイントっていうのを挙げていただきたいんですけど。
植松さん:音楽も聴いてほしいですけどね。あそうだ、こないだねえ、ファイヤーウォークのビデオ見てたんですよ、火渡りの。でね、普通の人が神社とか集まって、レクチャー受けて、裸足になって火の上を歩いちゃうんですよ。熱いじゃないですか、あれ。それを普通の人たちがやってるのを見てね、すごいことだと。人間ってこんなことができるんだなって思ったの。で、ジャケット見たら、『火の上を歩いた35人』って書いてあって(笑)。俺たち意外とこれをやったのかなって思った(笑)。ファイヤー・ウォークを35人でやっちゃったのかなって。僕はけっこう、誇りに思ってますよ今回のゲーム。1人1人、みんな頑張って、こういう気持ちにさせてくれて。僕も頑張ったし(笑)。
──坂口さんもファイヤーウォークされましたか。
植松さん:坂口は、灼熱地獄でしたね(笑)。上から下から前から後ろから(笑)。
坂口さん:けっこう足の裏の感覚ないぞみたいな(笑)。
──実際のところFF6って、たぶんキャラ全員が主役なんでしょうけど、その中で主役としては…。
坂口さん:だから最初のコンセプトにはそういうのはないんですよ。まあ、11人のキャラがいて、最初にとにかく11人がそれぞれ別の考えからとかをしているのを見せて。いろんな共感できる生き方ってあるじゃないですか。それが11種類あったうちに、子供たちがそれぞれ、僕はあいつの生き方が好きだとか、言うことが好きだとか、それぞれ変わってほしかったんですよ。最後にフタ開けたら、100万人か200万人の好みが11分割してほしかった。きれいに。だから、主役はないんです。自分の好きな生き方しているやつが主役と思ってくれれば。
──ここで2人の対決っぽく話しを聞きたいんですが、FFシリーズがこんなにウケたのは、どちらのおかげでしょうか。
植松さん:坂口のおかげでしょう(笑)。
坂口さん:いや、植松のおかげですよ。
──植松さんはどうして坂口さんのおかげだと思いますか。
植松さん:いや結局、生みの親ですからね。あの、1のころの自分でロム持って、雑誌社を渡り歩いた根性は僕はいまだにすごいなあと思いますけど(笑)。まだ何もFFってのが世に出てないころにね。宣伝とかに任せないで自分で持ち歩いたガッツってのはすごいなと。
坂口さん:照れますね(笑)。何が照れるって、やっぱり、一緒にやってきた連中にほめられるのが一番照れますよ。
──しかも目の前で(笑)。
植松さん:2人見つめあった仲じゃない(笑)。
──坂口さんのほうはどうして植松さんのほうだと思いますか。
坂口さん:大体、イベントはまず、音楽なしで作るんですよ。これにね、音楽がついた瞬間ってのは、画面が本当に、今までぼやっとしたブラウン管で見ていたのが急にハイビジョンになったくらい、すべてが印象深く入ってくるんですね。
──ドラマってのは音楽に左右されますよね。
坂口さん:やっぱり、気持ちがセリフとか画面の動きで流れていくとき、耳から入ってくるものが気持ちを高めたりするから。
植松さん:いやいやいや(笑)。
──逆に一緒に仕事をやっていくうえで、彼のこのへんが不満だということは。
植松さん:最近、言い合いってやらないんだよね。
坂口さん:2年前くらいは言い合いやってたりしたけど。
──どうしてやらなくなっちゃったんでしょうね。
植松さん:いや、大抵わかるっていうか…うん。おそらくね、坂口が言ったことに対しても、僕は最近、反論してないんですよ。言われた通りってこともなくて、これはこれでいいんじゃないかってところは、言うこと聞かないですけどね。例えば、オープニングのパイプオルガンで入るとこなんか、坂口がこれちょっと怖いんじゃないかと。怪奇映画のドラキュラになっちゃうんじゃないかと言ってたんです。でも、僕はいいような気がしたから、あ、そうって(笑)。さらっと流して、そのまま置いといたりとかしてました。
坂口さん:コミニュケーションができあがっちゃったのかもしれない、あ、そうって言われたことに対して、そうなんだと思います(笑)。これは彼が推したいことなんだというのがくみ取れれば。
植松さん:昔は単純なことでいろいろ言い合いしあうようなことはまあまああったけどね。
坂口さん:やっぱり、1のころはボツだ何だといろいろありましたけど。まあ、僕自身、やりたいことが見えてなかったっていうのがあったじゃないですか。で、ハードの進歩もあって、ここまで出来るんだっていう限界が見えてきたときに、なんとなくFFはこっちの方に行きたいんじゃないかっていうのが見えて。それが見えてきちゃうと、そこに向かって、じゃあ、どういう風にお互いアイデアを持ってアクセスしあうかって話だから。波長はね…。
植松さん:合ってると思う。別に進行とかはいつまでに終わらせなければならないってあるじゃないですか。坂口がトップはってるとね、あんまり心配しないんですよね。やっちゃうだろうから(笑)。今回はね、穏和でしたよ、比較的。
坂口さん:みんなにそれ言われたな。
植松さん:社員のみんなとも話すんだけどね、今回、坂口さんずいぶん穏和だったねって。子供できると人間変わるんだな(笑)って話してたけど、でもそうじゃなくて、やり方を知ったんでしょうけどね、トップのはりかたを。
坂口さん:あとは、サブっていうか、演出のやつとかプログラマーとか、グラフィックを描いているトップの2,3人とか、やっぱりすごく成長したからね。彼らにお願いしておけば、あまりカリカリしなくても、ちゃんとハイクオリティで物事が進んでいくんで。
植松さん:余裕になったと。
──シリーズ重ねていくごとに、スタッフの信頼感が高まったんで、ケンカの必要が無くなったということですか。
坂口さん:今回、一番スケジュール的にきびしかったんですよ。だからね、自分自身がプレッシャーを押さえることで手いっぱいで、それを表に出しちゃいけないっていうのは、あったかも。出したらきっと収拾つかなくなっちゃうし。
植松さん:逆に僕の方がピリピリしてたかもしれない、今回。いつまでたっても坂口のほうがニコニコしてるんで(笑)。僕、今まで、音楽以外の人に対して、「ダメだよこんなんじゃ」って言ったことなかったですけど、今回は何回か言いましたもんね。
──それでは、読者にもっとこう楽しんでほしい、というのがありましたら。
植松さん:何回もやってみてください。何回も遊べると思うんですよ。
坂口さん:前半はバーッと一本道でいくけど、途中でゲーム性変わって、ある程度やり込み型になるんでね。僕はとにかくエンディング見てもらいたいんですよ。やっぱり5のエンディングを越えなきゃならないってのがあったんで。自画自賛にはなっちゃうんだけど、今回のエンディングは感動するんですよ(笑)。それをぜひ見てほしいから、攻略本みてでも何でもいいですから、何とかエンディングまでたどり着いて見てほしい。
──最後に一言、お願いします。
植松さん:シャドウに要注意ですよね、僕はね。あとは、えー、CD買ってください(笑)聴き応えあると思います。FFチームの全員で歌を歌ってるんですよ。
坂口さん:女房にやめろって言われたんですけど(笑)。
植松さん:『近づく予感(※)』。なかなかさわやかな歌です。
坂口さん:歌詞がすごいんだよな、これがまた(笑)。
──坂口さんは。
坂口さん:とりあえず、FF6を買った人は、最後まで行ってほしいと。この本を読んだだけではFFのおもしろさはわからないんで(笑)。
植松さん:うわー、うまいなあ、考えてたみたい(笑)。
(※)「近づく予感」はFF6のシングルCDに収録されていたものです。
 
---1994/05/05増刊 Vジャンプ緊急増刊より抜粋
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Special Thanks to : 睡蓮・c・野村さん




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